G-PLANとは、英国老舗家具メーカーE.Gomme(イー・ゴム)社が1952年に作った家具ブランド
「何年もかけてプランを立て、
買い足していく家具」
G-PLANとは、英国老舗家具メーカーE.Gomme(イー・ゴム)社が1952年に作った家具ブランド。
E.Gomme社は1898年、創業者であるEbenezer Gomme(エベニーザー・ゴム)による椅子づくりから始まりました。
義兄のジム・ピアスと提携し、E.Gomme(イー・ゴム)社となる家具製造事業を設立します。
1909年、イングランド・バッキンガムシャーにあるハイ・ウィカムのリーストリートに新工場を設立。
ハイ・ウィカムはカントリーチェアの代名詞ともいえる「ウィンザーチェアの故郷」と呼ばれています。
1880年代には街に100を超える家具工場があり、1日に5000脚ものウィンザーチェアが生産されていたこともある、いわば家具の街です。
【ハイ・ウィカム】
1911年には2人の息子、フランク、エドウィンがパートナーシップに参加しました。
当時はどちらもまだ独身、働き盛りだったので今後の仕事に専念するための十分な時間があり、
未来は輝かしく見えたといいます。
その後、戦争がはじまりすべてが変わりました。
航空機を作るためには、熟練した木工職人が必要となる木造のフレームが必要でした。
【airco DH4】
翼の部分やプロペラなど航空機の部品を作っていました。
残念ながら、ハイ・ウィカムの木工職人の多くはそこでの仕事が儲かっていたために、イギリス空軍のあるヘンドンに引っ越しました。
そのため、町は熟練の木工職人を多く失いました。
20世紀の初めに、機械化による大量生産の基盤を作っていたE.Gomme社は、 戦後の復興の中でいち早く家具を大量生産して成功をおさめた、1950年代のイギリスで最も大きな家具メーカーでした。
そんなE.Gomme社の創業者の孫、三代目となるドナルド・ゴムが、 デンマークなど北欧のスタイリッシュな家具のデザインを取り入れて製造を始めた家具がG-PLANです。
当時のイギリスは、第二次世界大戦による物資不足を補うため「ユーティリティ・スキーム」と呼ばれる政府の規制の管理下に置かれていて、 自由に家具が製作できない時代でした。
それまで英国家具で使われていた高級な木材や美しいデザインは規制され、 質と価格を抑えた実用的な「ユーティリティ・ファーニチャー(統制家具)」が普及します。
ユーティリティースキームのために、自由にデザインした家具が造れないイギリス。
対照的に戦後「スカンジナビアデザイン」と呼ばれるスタイリッシュな家具をたくさん作り出したデンマークなどの北欧。
デザイン面ではかなり遅れをとってしまったイギリスですが、制度終了後E.Gomme社の3代目責任者Donald Gomme(ドナルド・ゴム)は、 北欧のスタイリッシュなデザインの家具に影響を受け、英国の老舗家具メーカーらしい品質の高いシンプルな家具、G-PLANを1952年にスタートさせました。
さらにはデンマーク出身のインテリアデザイナー、Ib Kofod Larsen(イプ・コフォード・ラーセン)を迎え、 デンマークのモダンなデザインの家具を発表したことで、G-PLANは絶大な人気を得ていきました。
デンマークの優れた職人の為のコンクール「スネーカーギルド」にて、
スネーカーギルド賞受賞の他、HOLMEGAARDSクラスコンペで金賞など数多くの賞を受賞。
彼の代表作であるチェアは、エリザベス女王が1958年コペンハーゲン滞在中に
ご購入された事を記念し、エリザベスチェアと名づけられました。
スカンジナビアのデザインを国際的なモダニズムとして広め、1950年代には米国で最も売れたデンマークの建築家の一人になりました。
北欧のデザインで、チーク材を使った、英国老舗メーカーが造る「最高品質」G-PLANの家具は、その後、「フレスコ」「チーク」「シエラ」シリーズが世界中で販売されました。
残念ながら1987年には会社が売却されましたが、今も、イングランド西部で「G-Plan Upholstery」がソファを、スコットランドで「G-Plan Cabinets」がキャビネットを、
今なお作り続け、イギリスを代表する老舗メーカー「G-PLAN」として存在しています。